2022/03/05()

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ロードレースを観てみよう! -ルール編-

知っているのと知らないのでは

こんにちは、玉ちゃんです

 

ロードレースが開幕しついにUCIカテゴリーのワールドツアークラスのレースであるUAEツアーが開幕しました。

ワールドツアーというのは簡単にいうと一番上のクラスのレースだと思っていれば間違いないです。

 

さて、ロードレースを観ているとときおり不思議な光景を目にします。

例えば、スタートし始めてすぐ何人かの選手が集団から飛び出したのに誰も追わないとか。

かと思えば1時間近く飛び出した選手を集団が捕まえては逃げるを繰り返したり。

はたまた、敵同士のはずなのにどうみても協力していたりと。

 

なかなか、不思議な光景です。

これらはすべてロードレースの戦略やセオリーが元になっています。

なので知っていて観戦するのと知らないで観戦するのでは面白さが格段に違います。

 

僕はサッカーとか観ていてもルールを知らないのでめっちゃつまらないです.

おそらくルールや戦略を理解していれば面白く観られるのでしょうね。

 

ということで、今回はロードレースのルールや戦略について説明します。

誰が為に逃げは走る

ロードレースはスタート地点から数キロ先にもう一つのスタート地点があります。

これは、シクロクロスのようによーいどん!で、一斉にスタートしてしまうと先頭がスタートしてから最後尾がスタートするまでに非常に時間がかかってしまい後ろの選手が幾分不利になってしまいます。

そのため、スタート地点から数キロをパレードランという十分に加速や位置取りをするための時間として取り、準備が整った状態でレースが本格的にスタートする「アクチュアルスタート」方式を採用しています。

こうやって公平性を保っているのですね。

 

さてこのアクチュアルスタートが切られると行われるのがアタック合戦です。

アタックとは、集団のスピードよりも速いスピードで走行することで集団や相手よりも先に行く加速のことを指します。

そして、スタートと同時にアタックをすると「逃げ」と呼ばれるものが形成されます。

 

逃げは、1人から多いときは20人前後で形成される小集団で集団よりも速いスピードで走行します。

この逃げがかなりロードレースを理解する上で重要になってきます。

 

逃げには主に以下のような意味合いがあります。

1.逃げ切り優勝を狙う

2.スポンサーへのアピール

3.前待ち作戦

4.他のチームメイトを休ませる

 

1.逃げ切り優勝を狙う

集団から逃げ続けてそのままゴールを狙う戦法です。

これを決めるのはなかなか難しいですがこれが決まったレースは非常に見応えがあります。

数と長年の経験がものをいう場合が多いですね。

あとは、先頭集団の中に総合争いをしている選手が多くそれぞれ牽制し合う中に、たまたま総合争いから関係ない選手が混じっていると逃げても誰も追ってこず勝つということがあります。

プロ選手でいうとトーマス・デヘント選手は逃げが得意な選手の一人です。

この選手が逃げているステージはだいたい面白くなります。

2.スポンサーアピール

この場合の逃げは、勝つための逃げではありません。

どういうことかといいますと、ロード選手はいわば走る広告です。

基本的には、ロードレースチームはスポンサーの出資でチーム運営をしています(たまに国営もありますが)。

なので、チームのジャージや自転車には各スポンサーの名前や商品名が入っています。

 

そこで、重要になるのがテレビへの露出度です。

仮に集団の中にいた場合はどうなるでしょうか?

集団は80~100人前後の選手が所狭しとひしめき合っています。

その集団内で映されるのは有名選手や優勝候補などで、アシスト選手や比較的弱いチームはあまり映されることはありません。

しかし、逃げはどうでしょう?

逃げは1人~20人前後しか選手がいません。

更に必ず逃げ集団にはバイクモトが張り付くので映らないことはまずありえません。

なので、逃げの集団にいるとかなり長時間、しかも、間近でテレビに映してくれるので仮に結果を残せなかったとしてもスポンサーは喜んでくれるのです。

このようなスポンサーアピールは、チーム運営が困難なカテゴリーが低いチームなどが積極的に行います。

3.前待ち作戦

前待ち作戦は、予め逃げ集団に選手を送っておき、逃げ集団とメイン集団の距離が近くなったところで本命の選手が集団からアタックします。

そうして、逃げ集団にブリッジ(後ろの集団から前の集団に追いつくこと)をかけ、逃げ集団にいるアシストともに更にアタックを掛けたりして逃げ切る戦法です。

 

4.他のチームメイトを休ませる

ロードレースには不文律というか暗黙の了解があります。

詳しくは後述しますが逃げに関わる不文律も存在します。

それは「総合リーダージャージを着た選手がいるチームはなるべく集団の先頭で牽引しなければならない」というものです

これは建前上、牽引する理由があるかないかというところがミソになってきます。

総合リーダーは逃げ集団をそのまま仮に逃してしまうとタイム差によっては総合リーダージャージを奪われる可能性があるから引くのが普通だよねという話です。

 

しかし!仮に逃げ集団に総合リーダージャージの選手のチームメイトがいた場合には話が異なります。

というのも、逃げ集団にチームメイトがいる場合は、仮に逃げ集団が逃げ切ったとしてもチーム的には区間優勝を狙えるチャンスが有ることになります。

そうなった場合は、別にこちらとしては総合優勝でも区間優勝でもいいですよというスタンスを取れるので追いかけなくてもいい理由ができることになります。

 

そうすることにより、集団の先頭に入れ替わりでアシスト選手を送り、チーム全体の体力を削らなければいけない状況から一変!

スポンサーアピールもできて、あわよくば区間優勝のチャンスもあって、なおかつ、1人の働きでチームメイトの体力消耗を抑えられるのでかなりお得な状況を作ることができます。

 

逆転の発想ですね。

ちなみにこのような暗黙の了解があるのでグランツールなどでは、序盤はあえて総合リーダージャージにならないギリギリのタイム差で寸止めしておき、中盤辺りから総合リーダージャージを奪い取ってタイム差を広げるという戦法をとることがあります。

俺とお前は今日からブラザー

有名なスポーツというと日本では野球とサッカーですよね?

その試合を観ていて、敵同士で協力するシーンは見られないと思います。

しかし、ロードレースではしばしば敵同士で協力する場面が観られます。

 

例えば、先程ご紹介した「逃げ」が一つの良い例です。

逃げ集団をよく観てみるとほとんどが違うジャージ、つまり、お互いが敵同士で構成されているわけです。

でも、どういうわけかきちんと皆が順番に先頭交代もしますし、あまつさえ、補給食のやり取りをする場面すら観られます。

これは、彼らの目的が一致しているからです。

逃げ集団というのは、例外もありますがどんなに逃げ切りが難しい状況でも、なるべくゴール直前まで集団から離れて走ることです。

ですが、仮にそれをひとりひとり協力せずにやってしまうとそう長くは逃げられなかったり肝心なときに体力が残ってなかったりします。

なので、敵同士ですがゴール前までは仲良く協力して走ったほうが各々の目的を達成しやすくなるため「協調」をするのです。

 

それ以外にも敵同士で協力する場合があります。

それは利害が一致した場合です。

例えば良い例が2016年ツール・ド・フランス第11ステージです。

この日は、フラットコースなので誰もが集団スプリントでのゴールを予想してました。

しかし、残り12kmでペーター・サガンがアシストのボドナールを連れて集団から飛び出します。

それに、反応したのはクリス・フルームとそのアシストのゲラント・トーマス!

通常で考えるとこのアタックに対してはその日スプリンターでの区間優勝を狙ってるチームがチェック(アタックに対して反応し潰すこと)をしなければいけません。

しかしながら反応したのはまさかの総合系チーム(総合優勝が目標のチーム)のエースとそのアシストのみ。

ここで大事になってくるのが「ポイント」「タイム差」「ボーナスタイム」です。

ここでのポイントとはスプリンターたちが競っているポイント賞争いのポイントで、平坦ステージなどではゴールにもこのポイントが大量に設定されています。

サガンはこのときすでにマイヨヴェールを着用しておりポイント賞争いでは首位でしたが他のライバルを圧倒するためのポイント稼ぎをするために逃げたというわけです。

さてこの場合は、どういう動きになるか皆さん予想できますでしょうか?

僕は当時できました。

 

まず、フルーム組とサガン組は強調して逃げグループを形成します。

そして、ゴール前まで牽制することなく協調し続け、優勝はサガンもしくはボドナールに譲りフルームは2位か3位でボーナスタイムをもらう。

 

実際に、そのとおりになりました。

フルームはボーナスタイムと言って上位着順者に与えられるボーナスと集団に残っている総合のライバル税とタイム差を稼ぐために、「逃げに協力するし優勝も上げるから俺たちも混ぜてくれよ」といった感じでついていったわけです。

このときは、サガンとフルームがそれぞれ目標が違うことが逆にお互いがよどみなく協調できた理由です。

ちなみに、集団はというとスプリンターチームは逃げを追わなければいけないのですがここでアシストを使って逃げを追ってしまうと集団ゴールになった際にトレインを組めなくなってしまうのでライバルチームが引いてくれないかなとお互い牽制してしまい結果逃げ切られるという最悪な結果に・・・

 

 このように利害関係が一致していれば、立場上敵同士でも協調したり助け合ったりします。

また、本当はやってはだめなのですが、同じ国同士で国を代表するような選手のアシストをするとか・・・

いわゆるリスペクトというやつですね。

 

僕の記憶にあるリスペクトアシストだと、アングリルで怒りの猛追をしたコンタドールをアシストしたエンリク・マスや、パンクしたリッチー・ポートにホイールを差し出したサイモン・クラークでしょうか。

本当はだめですし、リッチー・ポートはペナルティを受けました(アシストだから関係ないけど)。

大事なのはリスペクト

あとロードレースにはルールにないルールがあります。

これらは、相手をリスペクトをする気持ちで作られたものから、そうするのが基本的には当たり前だからというものまで、できた理由は様々です。

 

例えば、先程「逃げ」の際に話した総合首位の選手がいるチームが集団をコントロールしなければならないというやつですね。

 

他にも、総合首位の選手がメカトラブルで遅れた際にはペースは上げずに集団復帰するまで待つというものです。

こちらは、トラブルに関しては実力によらない部分での遅れですよね?

なので、相手の実力をリスペクトし待ってあげているわけです。

まー場所によっては、これの限りじゃないですが、比較的にゆったりしているときにこれをやるチームはかなり嫌われます(チームカ○ューシャとかアスタナ・カ○フスタンとか)。

 

 

面白いものも一つご紹介します。

ヨーロッパの選手は、生まれ育った街をレースで凱旋することがまれにあります。

その選手は、集団から逃げても追われません。

これは、ちょっと挨拶行くだけで戦略的に逃げているわけじゃないし戻ってくると言うのを誰もが理解できているからです。

またレースを開催してくれているその地域の人たち向けのちょっとしたサービスみたいなものです。

まとめ

特にまとめることはないですが、この辺のルールやらマインドやらがロードレースを複雑化している要素だと思います。

前回解説したことや今後解説することもそうですが分かる人と見るのが一番早いです。

 

うちのスタッフでいうと玉永、草井さん、森さん、古財さんあたりに聞いてみてください。

ではまた!

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